津地方裁判所 昭和50年(行ウ)3号 判決 1978年9月07日
原告 谷口年明
被告 三重県知事
訴訟代理人 松津節子 竹田盛之輔 澤田成雄 木村三春 島井不二雄 ほか九名
主文
一 本件訴をいずれも却下する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は別紙区画漁業漁場図記載の漁業区域において真珠区画漁業魚場計画を樹立(立案・公示)せよ。
2 被告は、原告に対し四三七万円及びこれに対する昭和五〇年八月三〇日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
3 被告は、原告に対し、昭和五〇年八月二九日より右漁場計画樹立まで、毎年四三七万円の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 第二、三項につき仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
(本案前の答弁)
主文と同旨
(本案の答弁)
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 主文第二項と同旨
3 仮執行免脱宣言
第二当事者の主張<省略>
第三証拠<省略>
理由
一 原告は請求の趣旨第一項で被告に真珠区画漁業漁場計画の樹立を求めているが、右訴は被告に対し作為を求めるもので、いわゆる義務づけ訴訟であることは明らかである。
ところで、義務づけ訴訟が認められるか否かについては争いのあるところであるが、行政庁が当該行政行為をなすべきことが法律上き束され、その内容が一義的に定められていて行政庁の第一次的判断権を重視する必要がないことが明白で、かつ、当該行政行為がされずにいる状態が違法で国民が回復し難い損害を蒙りもしくは蒙る危険が切迫していて他に救済を求めることができないほどの必要性のある場合に限り無名抗告訴訟の一種として義務づけ訴訟を認めるのが相当である。
そこで、本件訴が右要件を具備するものであるかどうかにつき判断するに、漁場計画は県知事が漁業上の総合利用を図り、漁業生産力を維持発展させるためには漁業権の内容たる漁業の免許をする心要がある(漁業法一一条一項)と判断したときに樹立するものであり、管轄するどの海域にいかなる漁場計画を樹立するかは右の目的の下に、自然、社会、経済的諸条件を考慮して決定すべきもので県知事の裁量に属することであり(なお、被告は昭和四九年一二月一日本件漁業区域にヵキ養殖の区画漁業免許を訴外組合に認めた(右事実は当事者間に争いがない)、本件において義務づけ訴訟を認めることは被告行政庁の第一次的判断権を侵すこととなるから、本件では義務づけ訴訟は許されないものといわざるをえない。
二 原告は請求の趣旨第二、三項で被告に対し損害賠償を請求しているが、被告は国の行政機関にすぎないのであつて、その行政処分の取消等を求めるのであればともかく、私法上の権利義務の主体となることはなく、原告の右請求は被告適格のないものを相手方とするものであり不適法である。
三 よつて、本件訴はいずれも不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 豊島利夫 川原誠 徳永幸蔵)
区画漁業漁場図<省略>